阿寒摩周国立公園を味わいつくすVol.1

屈斜路湖でSUP(Stand Up Paddleboard)

posted:2023.8.6 location:屈斜路湖和琴半島

湖と一体になれる場所 〈SAWAKKA〉屈斜路湖の魅力とは?

屈斜路湖畔で<SAWAKKA>のSUP(Stand Up Paddleboard)初体験。天候晴れ!25℃!風もほぼない!「SUP日和だねえ」と頬をゆるめる我ら。ラッシュガード(マリンアクティビティ用の長袖)っぽく見えるトップスを羽織り、スパッツにショートパンツ、サンダルにキャップ。見た目はそれっぽい。準備万端!温かい日はウェットスーツを着なくてもいいんですって。お手軽!

少し早くついたので、湖を見にいく。凪の穏やかな湖面。遠くにはすでにSUPを楽しんでいる人も。波打ち際には賢そうなワンちゃんが楽しそうに水遊びして気持ち良さそう。きれいな砂浜には3枚のSUPボードが・・・。もしやこれに乗るのか・・・一気に不安が高まる。

待ち合わせ場所の駐車場に戻ると<SAWAKKA>の奥田さんが小麦色の優しい笑顔で出迎えてくれた。書類にサインをし、ライフジャケットを着用、各自ドリンクやカメラ・携帯などを持つ。水没したくないけど水没する気しかしない私はカメラも携帯も持たず、ドリンクと楽しむ気持ちだけを持参。

私の不安な気持ちを和らげるかのように、まずは砂浜で道具の名称や操作方法をゆっくりていねいにレクチャーしてくれる。パドルの持ち替えもジタバタ・・・陸上で漕ぐ練習をしているだけで緊張してドリンクをなぎ倒し、一口も飲んでいないのに砂だらけにしてしまう始末・・・。大丈夫だろうか。かつて乗馬体験でひとりだけ前進できずに馬と共に立ちすくんでいた自分を思い出す・・・。

いよいよ本番!湖にそっと浮かべたボードにつかまりながら少し沖へ歩く。ゆっくりと足を乗せ、まずはお座り。よし、転覆していない!ゆ〜っくりと立ち上がる。生まれたての子ジカ!?水に浮かぶ木の葉の上の虫のような心もとなさ。そんな私に呆れることなく「上手ですよ」と聖母のような優しい言葉で包み込んでくれる奥田さん。その言葉に背中を押され、恐る恐る漕ぎ出してみる・・・。よし、進んでる!方向転換、できた!後ろを振り返ると、相方は涼しい顔で漕いでいる!立つと視線が高くなり、カヌーやボートとは違った視点の景色、水面を見下ろす初めての不思議な感覚。

SUPの聖地になる!?屈斜路湖だからこそ出会えたこの景色

湖上を滑るように進む

漕げるようになると五感が研ぎすまされてくる。ボードをつかむようにぴったりと密着している足裏から、波のゆっくりとしたうねり。パドルを握る掌は普段よりもずっしりと重みや密度を感じながら湖水を押し出していく。アメンボか忍者にでもなったかのような・・・。波紋が静かに広がっていく。「乗っている」というより「浮いている」感覚。

立つまでは自分の足元しか見ていなかった目には、湖底まで見える澄みきった水面と大小さまざまな魚たちの群れが映る。砂浜で遊ぶ人たちの声は、半島で鳴く「ミンミンゼミ」や鳥の鳴き声にとって変わった。「ミンミンゼミ」の北限って知ってはいたけど、意識して聞いたの初めてだったかも。

ボードに寝転がってみる

半島西岸のくびれよりもさらに北側の湾のようになっているところで休憩タイム。奥田さんのマネをしてボードに自分の足を抱えて座ってみると、湖との一体感がより感じられる。

寝そべると太陽の光がまぶしく目に飛び込んでくる。涼しい時間帯ならお昼寝だってできちゃいそうな気持ちよさ。足先だけ水面につけることができるのもフラットなSUPならでは!ひんやり気持ちいい〜。

湖上に座って会話


ボードに座り、水に触れながら、いつしか奥田さんとSUPの関係についてのお話に・・・。もともと北見でサーフィンとSUPをしていて、9年前の冬、屈斜路湖で初SUP。今まで東京でスカイツリーを眺めながらのSUPや、沖縄・積丹・支笏湖などあちこちでSUPをしてきた奥田さん。屈斜路湖に決めた理由はなんなんだろう。

「半島が風除けになってフラットな水面は初心者でも安心。スキルが上がってきたら、”オヤコツ地獄”(注)まで→半島一周。スタミナに自信がある人は広大な湖で遠漕にチャレンジできる。寒くなったら”オヤコツ地獄”で暖もとれますしね。半島に近づくとアメリカミンクがザリガニを食べているところをしょっちゅう見かけたり、稀少な野鳥を間近で見られたり。毎日来ても飽きないです。ミンクばりに屈斜路湖に居着いちゃってます(笑)。」「”オヤコツ地獄”の西側には探勝路からは見えない、通称『グリーンビーチ』と呼ばれる場所があって、そこが白い岩盤に温泉の緑が映えてすごくキレイなんです。」「night SUPではボードの裏に専用のLEDをつけて漕ぎ出します。光に魚が沢山寄ってくるのでお子さま連れの方にも楽しんでいただきたいですね。」笑顔と一緒に屈斜路湖への愛がどんどん溢れてくる奥田さん。

(注)”オヤコツ地獄”とは・・・半島先端の湖の境目から噴煙が上がっているポイント。アイヌ語で「オヤコツ」は「尻が陸地にくっついている」という意味。

ずっとこの町に住んでいる私より遥かにこの湖の魅力を熟知している。警戒心の強い動物さえ心を許してしまうSUPや奥田さんの穏やかさがあらわれている。

青空と美しい湖と

SUPは気軽に始められる分、気を抜いてしまう方も多くて、沖まで風で流されている方を救助したこともあります。ボードに上がる体力もなくてとても危険な状態でした」と真剣な面持ちで語る奥田さん。

「落ちないようにうまく漕ぐことも大切だけど、落ちた時にボードに上がる練習とか万が一に備えた練習も前もってやっておくのが必要なんですね」というと、相方が「経験してみた方がいいんじゃない?」と少し悪い顔でこちらを見ている。ここまで落ちずに来たのに!?午後からは普通に勤務なのに!?でも確かにこんなチャンス滅多にない!「・・・もうちょっと浅いところでなら・・・」

恐る恐る足から落ちる。ボードに捕まると恐怖で腕が縮まり足はボードの下に潜り込んでしまった。「全然上がれません!!!」少しパニック。「ゆっくり腕の力を抜いてバタ足してみてください」と落ち着いたトーンで指示してくれる。藁にもすがる思いでボードにすがっている手を伸ばし、バタ足!体の下まで足が来たところでプールから出る要領で両腕でボードを押して、足で水をキック!手こずったが何とかできた。落ちるとわかっててこれだから、予期せず落ちてしまったらもっとパニックになるよね。安全に楽しむって大切!

ボードに上がろうとするも...
上がれた!!

 

眺めるだけじゃもったいない!地球のエネルギーを受けとめて。

日本最大のカルデラ湖のその広さや美しく豊かな水。火山の、地球のパワーが溢れ出す<オヤコツ地獄>の温泉。天候に左右されにくい和琴半島だからこそのコース・地熱の高さから山野鳥や水鳥を通年で観察することもできる。

愛してやまない屈斜路湖岸のゴミ拾いなども積極的にしていて、「屈斜路湖の自然の豊かさ、季節ごとの楽しさを伝えながら、安全かつ楽しくできるSUPを広めていきたい」と目をキラキラさせながら話してくれた。「風は見えないけど、水面で風がわかる」という彼女は見えないものも大切にしながらSUPの魅力をどんどん発信していくのだろう。

奥田志保(おくだしほ)
屈斜路湖とSUPに魅了され、2021年に弟子屈町に移住、<SAWAKKA>でSUPツアーガイドを始める。「WAKOTO ROUND TIME TRIAL」(和琴半島一周チャレンジ)や「night SUP」など屈斜路湖の魅力を生かしたイベントを実施。SIJインストラクターを取得し「安心・安全にSUPを楽しむ人の輪を広める」活動をしている。

SAWAKKA
住所:北海道川上郡弟子屈町字屈斜路413-3
TEL:015-486-7912
営業時間:月〜金 9:00~17:00(火曜定休) 土日祝 9:00~16:00
URL:https://www.sawakka.com

※奥田さんは現在独立され、「屈斜路湖SUP CLUB」を設立し活動しています。
屈斜路湖SUP CLUB
URL:https://kussharoko.studio.site

Writer

CHIEKO
2児の母。2023年4月より川湯ビジターセンターにて憧れの自然解説員に。
ハンターである父に付いて野山を駆け回る生活をしていた。人生の9割を弟子屈町に捧げていながら、その魅力に気づいておらず、知るごとに感動する日々。勉強や経験を重ね、その魅力を発信できる人になる道を模索中。モットーは「仏のように生きる!」。

Photographer

SHIN
川湯ビジターセンター写真係。写真を通して阿寒摩周国立公園の自然の素晴らしさをお伝えしたい!と願って今日もカメラを片手に公園内へ。

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